【保存版】NHKせかほしロケ日記(回想録)
NHK人気番組「世界はほしいモノにあふれてる」 せかほしも5周年を迎えたそうです。私が出演させてナビゲートさせていただいた「イギリス暮らしを豊かにするアンティー・・・
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NHK人気番組「世界はほしいモノにあふれてる」
せかほしも5周年を迎えたそうです。
私が出演させてナビゲートさせていただいた「イギリス暮らしを豊かにするアンティーク」が2019年11月の放送でしたので、あれから4年が経過し5年目を迎えます。
その間にコロナが流行し世界的なパンデミックとなり、当然、世界中から魅力的な品物を見つけ出すバイヤーの動きも止まり、高視聴率で人気のこの「世界はほしいモノにあふれてる」の番組も余儀なく毎週の放送から特番へと変更になってしまいました。ここでは当時を振り返り、ロケのメイキングや番組放映後の反響、そして悲しい訃報に触れた三浦春馬さんとのエピソードも思い出しながら書いてみたいと思います。
イギリスロケ日記
イギリスロケ初日。
放映予定日の約2ヶ月前の9月上旬に2週間かけて、イギリスのアンティークフェアやアンティークディーラーなど、いつもの仕入先を回りました。撮影はロンドンからスタートし、初日のロケがセントラルロンドンのど真ん中、ピカデリーサーカス。
世界中の観光客が集まり、ロンドンに来たら必ず訪れるという人も多い場所。えっ、ここで??
そこにはカメラマンさんが待機して長い枝のマイクを持った音声さん、ディレクターさん、コーディネートさんがいて、いかにも何かを撮影しそうな雰囲気の中で、私がその中心になりレポートを始めることになりました。
旅番組のレポーターのように慣れた口調で「さあ、やってきました。ここはロンドンの中心地ピカデリーサーカス。 これから皆様を魅力的なアンティークの世界へお連れします、、、」などと大勢のギャラリーが囲む中、流暢なレポートができるわけもなく、自分でも何を喋ったかわからないままこのピカデリーサーカスのロケが終わった気がします。(未放送)
魅惑のアンティークフェア
そして、ロンドンから南に降りてアンティークフェアへ。
アーディングリーというイギリスでも2番目に大きいアンティークフェアでのロケです。
出展するディーラーも仕入れに来るバイヤーも世界中から集まるとても大きなアンティークフェアです。
いわゆる骨董市のように屋内で静かにというイメージでは無く、メインは屋外でイギリスの大草原の中で気持ちよく買付ができます。
ディーラーも笑顔で、顔馴染みが多くお祭りにみんなが集まっているという感じです。私がアンティークを探し出すために歩き回っているシーンやアンティークを選び商談しているシーン、その都度カメラマンさんと音声さんが私を追ってくるので、「あいつは何者だ?」という視線を浴びながらの買い付けです。
いつもの鋭い選択眼ではなく、緊張気味のちょっと泳ぎ目線で商品選択。
顔馴染みのアンティークディーラーからも「こっちにも来て〜」という普段は見せないようなビッグスマイルを私に送り、ウィンクまで送られ、ペースを掴めないまま散策する私でしたが、価値あるアンティーク家具が視線に入ればスイッチオン!いつものベテランバイヤーモードが自然と現れました。
本気モードで商品を選んでいると、さすがプロフェッショナルなカメラマンさん!オンエアで見たらこんなシーンを撮っていたのかと思えるショットで買付風景を撮影していただきました。アンティーク家具というのは時代を移す鏡
アンティーク家具は時代を移す鏡だと思います。
その家具がなぜ誕生したのか?
社会が安定し社交界が生まれ、人(特に女性)の交流が盛んになると化粧をしたり手紙を書いたりする機会が増えます。そうするとお化粧をするためのドレッサーや手紙を書くためにビューローといった家具が誕生し始めるのです。
そういった意味でもアンティーク家具は様式やデザインだけにこだわらず、その誕生の背景を紐解くと家具の歴史そのものを知ることができ、そこに歴史や秘話があり、イギリスで大切に現在でも扱われているのは、建築や文化などの伝統と同じく歴史そのものを大切に保管し続けているのがよくわかります。
そんなアンティークがこのアンティークフェアに来るとアンティーク雑貨からアンティーク家具、建築資材まであらゆるものが集結し、みんなでアンティークを語りながらお祭り気分を楽しんでいるのです。ライ(Rye)のアンティーク雑貨店
いつもの買付ルートで通り道のライ(Rye)にあるアンティーク雑貨のかわいいショップ。
ショップオーナーの個性とこだわりが満ちてるお店で、セレクトされてる一品一品も素敵なものばかり。
アンティーク雑貨にこだわり、決して売りやすいからと言ってリプロダクションは扱わないというこだわりぶり。
主にキッチン雑貨やアンティーク食器などを扱い、とても綺麗にお手入れされ、アンティークの魅力を引き出しています。以前、友人のイギリス人シェフがパイを焼くときにアンティークのプレートを使うと聞いたことがあります。
理由は新品のものよりもアンティークの方がバターの馴染みがよく上手く焼けるらしい。
そしてアンティークの調理器具を使うと「今までそれを使っていたシェフのパワーも感じる」と言っていたのが印象的でした。
私もそんな思いを馳せながらこのアンティーク雑貨へはよく足を運びます。可愛い街には可愛いティールームあり
可愛いアンティーク雑貨ショップがあるライ(Rye)ですが
可愛い街には
可愛いアンティークショップがあり
可愛いホテルがあり
可愛いティールームがある
というのが私のイギリス方程式です。ライ(Rye)の可愛い街並みから細い路地を入るとこの可愛いティールームがあります。
素朴でさりげなく、派手な演出もなく、英国らしいケーキと美味しい紅茶をいただけます。
実は私の英国買付日程は、いつも過密スケジュールで動いているので、日中に優雅にお茶を楽しんでいる時間はないのです。しかしこの町はアンティーク雑貨の仕入をした後に、ちょっと町を散歩したくなるところで、以前散歩した際にティールームを見つけたのです。アンティークのバイヤーとしての仕事柄、表に陳列されているものではなく、その背後に隠れている掘り出し物をつい発見したくなる癖がついているのか、このティールームも「路地裏」にあり表にさりげなくサインがあるだけというのにそそられ、中に入るとそこにイギリスの静かな時間があることを発見し、是非番組でみなさまにご紹介させていただきたいと思ったティールームでした。
※ライ(Rye)の可愛いティーハウス「The Cobbles Tea Room」の情報はこちら。
イギリスのデザイナーや映画で重宝されるMylandsペイント
Mylandsは150年以上の歴史ある塗料メーカーで王室のワラントホルダーいわゆる英国王室御用達として扱われて評価されている会社です。
ケントアンティークでもアンティーク家具を修理するのにこの塗料は不可欠で、設立当初より30年に渡りステインやポリッシュ、ニスを使用しています。実はこのMylands塗料はペンキも作られて材料には大理石を粉砕したパウダーが入っていて塗膜を強くしたり自然なマット感を出したりとその材料やレシピにも相当こだわりを持っています。
映画ではハリーポッターや007、ダウントンアビー、バービーなど、Mylands塗料を使っていない映画はないほど、あらゆる映画やTV番組のセットで利用されています。理由は色の豊富さ、そして古今東西、和洋とどんな色も作り出す特殊な機械とそれを作り出す職人技は他のメーカーの追随を許しません。
今回はこのMylandsペイントを使ってアンティークチェアに塗装を施し、10年後、20年後の変化を楽しみ、そのお手入れにより未知の美しさを育てようとチャレンジしました。番組ではチェアーを何色で塗るか?本当に迷いました。
アンティーク家具はただの色のコーディネートではないと私は思っています。
元の色が同じであったとしても時間経過や使用環境、木材の酸化など家具の色は変化します。それがアンティークの風合いであり魅力なのです。ですからアンティーク家具は和家具と合わせてもマッチします。モダンな空間にも溶け込みます。それはこの風化からくる馴染みなのだと思います。これをアンティーク用語としてパティーナと言ったりします。
今回はどのように風化して味わいを出していくか。そのためにをベースカラーは何色にするかを考えました。
ベースカラーを決めるにあたり、座面に張ったウィリアムモリスの代表作「いちご泥棒」で使われているいちごの赤がいいのではとか、草木のグリーン系も合うのではなどと考えましたが、ファッションのような色のコーディネートでは無く、このチェアーに物語やドラマを入れたかったのと年数を重ねることで醸し出す美しさを表現できる仕上がりにし未来のアンティークをつくりたかったのです。
新品のようなきれいなものは経年と共に損なわれやすいですが、アンティークのように既に経年したものは磨けば磨くほどに美しさを手に入れることができます。人も同じで若い時が綺麗ですが、美しさは年を重ねて生まれてくるものだと思います。人生とアンティークって実は似てるんだと思います。
とにかくこのアンティークチェアーの歴史とこれからの物語を生むために、ただカラーコーディネートで済ますことのない色は何か悩み、試行錯誤しましたが、イメージが行き詰まりました。
アイデアにも行き詰まりランチにしましょうと外に出た時、あるヒントが降りてきました。イギリスといえばレンガです。建物も塀も多くのレンガで作られています。そのレンガの色もエリアや時代によって色もサイズも違います。だからレンガの建物でもそれぞれ味わいと個性が生じるのです。
ランチをするのに外へ出たときに私の目に飛び込んできたのがロンドンイエローブリックで作られた塀です。
元々は黄色みのあるレンガですが、風化して黒ずんで壁一面が街に溶け込んだ街並みの一部になっています。鳥が草木に囲まれたウィリアムモリスの座面の柄とそれを包み込む大地と空をイメージしたチェアーのフレーム。利用していくことでチェアーのフレームの色が変化し座面と一体となり馴染む経過を楽しみ続ける。
このレンガのようにいづれ街並みと一体感を生む。
そんな思いで生まれた色味でした。
イギリス伝統のサンデーロースト
友人でありイギリスの仕事での長年のパートナーであるドミニックが日曜日に英国伝統的な習慣であるサンデーローストをリアルに紹介してくれるということで番組スタッフとお邪魔しました。
サンデーローストはイギリスで古くから伝わる伝統で、今でもパブやレストランでも日曜日のメニューはサンデーローストとしてローストされたお肉が振る舞われています。
いわゆるローストビーフですね。イギリスは暖炉の国であり、その暖炉を活用した調理方法がオーブンであり、料理もお菓子もオーブンを使ったものが多いと思います。
料理の調理方法やお菓子作りにも多用され、そこから生まれる味や食感、風味がイギリス料理の特徴だと感じさせてくれます。
人気のアーコール(ERCOl)を探しに英国南部のバトルへ
アンティーク家具は当然、今どこかの工場で作っているものではありません。
イギリスへ行ってどこかのショップへ行けば、必要なものが欲しいだけ買えるわけではないのです。
欲しいものを見つけ出すためには英国現地のスタッフやディーラーと協力し流通情報などを共有して入手するタイミングや場所を常に抑える必要があります。
その情報とルートがなければ必要なものを欲しいだけ買い付けすることは困難です。
今回は南のバトル (Battle)に人気のアーコールが手に入れられる情報を得たのでそのディーラーへ直行。
ストックスペースとして利用しているコンテナの扉を開けるとアーコールチェアがビッシリ。
思わずガッツポーズの瞬間です。
人気アイテムを沢山ゲットできた時の達成感はパートナー達とのネットワークやディーラーのパワーを感じる瞬間です!
当然、人気アイテムだけに全て買いました。良い買い付けをした後のご褒美
その日の宿泊は英国南部へ来たので海沿いのホテルに宿泊。海から近いのでシーフードが美味しいだろうと、イギリスらしくフィッシュ&チップス。
お魚も新鮮で揚げ方も上手でサクサクしてとても美味しかったです。
私の美味しいフィッシュ&チップスの基準は、お魚が新鮮で揚げる油がフレッシュでサクサクしてること。よくパブとかで冷凍物を揚げてるところがあるので、それは避けたいところです。
イギリスで注文するフィッシュ&チップスは日本の一般的なものと比べてとにかく大きいです。
お魚まるまる一匹分。
それにチップスがお皿いっぱいに寄せています。
私のお気に入りの食べ方としては、イギリススタイルの王道としてモルトビネガーをたっぷりお魚の衣に染み込ませ、塩を振って食べるのが一番美味しく、イギリス料理を実感できます。
チップスの代わりにヘルシーにグリーンピースもオススメです。
やはりシーサイドのフィッシュ&チップス屋さんは美味しいです。エレガントな気分でイングリッシュブレックファースト
翌日のホテルの朝食は海を眺めながら気持ちよくイングリッシュブレックファーストをいただきました。
イングリッシュブレックファーストの定番と言えば、クリスピーに仕上げたトーストにバターをたっぷり塗って、濃い目のブラックティーにミルクをたっぷり入れた紅茶と、大好物の4分30秒茹でのボイルドエッグを付け合わせるのが私流ってとこでしょうか。このホテルでは、英国の伝統的な朝食メニューの一つkipper(キッパー)が用意されていました。
最近はフルイングリッシュブレックファーストというとベーコン、ソーセージなど肉食が主流ですが、このキッパーはニシンの燻製で臭みは全然なく燻製具合もちょうど良く、味わい深く本当に美味しいです。朝食からこれをいただけるとは、ちょっと贅沢な気分を味わえます。スタジオ撮影 優しい三浦春馬さん
私に「緊張してますか?大丈夫ですよ自然体で」と優しく話しかけてくれた三浦春馬さん。
私はあまり芸能人を知らないのですが三浦春馬さんが俳優だということはなんとなく知っていました。ただ子役の頃から活躍されているベテラン俳優だとは知らず、若い方なのに随分落ち着いた方で周りに配慮ができて、会話にも余裕のある方だな。という印象を持ちました。
その後も私に優しく微笑んでくださり、興味深そうに「素敵なお仕事をされてますね」「僕も実は先輩から譲り受けたデスクを大切に使ってるんですよ」「最初は古いからどうしようかと思ったんですが、修理をしたらすごく魅力的になっちゃって。愛着が湧いてるんです。古いものってなんか良いですね!」とお話ししてくださいました。撮影の時の服装も、私は以前にエリザベス女王の60周年のダイアモンドジュビリーのコロネーションに特別参加させていただき、その時にロイヤルファミリーの次にナンバリングされた限定の紫色のネクタイを満を期して付けていったのですが、三浦春馬さんもその時は紫色のシャツを着ていて「樋口さん、私の衣装知っていました?まるでコーディネートして合わせたようですね」とニコニコしながら遊び心いっぱいで話してくれました。
その後入ってきたJUJUさんもそれに気づき、「あー二人紫で合わせてる〜。私も合わせよう〜」と途中で楽屋へ戻り紫色のアクセサリーを身につけて不思議と3人で紫色のコーディネートをした記憶があります。
その時も三浦春馬さんは無邪気に笑って楽しんでるような、茶化しているような感じで、とても楽しい雰囲気で私の緊張も知らない間に解け、自然体で撮影に臨むコトができました。
もしかしたら緊張を和らげるための三浦春馬さんとJUJUさんの気の利いた仕掛けだったのかも知れません。撮影中も時折、私に目線を配っていただき、目で「大丈夫ですよ」と合図を送り、口角をキュと上げさりげなく微笑み常に緊張感を解き、安心させてくれた三浦春馬さんの器に本当に助かりましたし、感謝でいっぱいです。
収録中にアンティークのマッサージ器を二人が手に取って遊ぶシーンがあるのですが、事前のリハーサルの時にスタッフの方から、「三浦春馬さんの衣装は大切なので、このマッサージ器を、三浦春馬さんのジャケットに当てないようにしてください。JUJUさんと三浦春馬さんが遊び始めたら樋口さん止めて下さいね」と指示をいただきましたが、本番では案の定、お二人がアンティークのマッサージ器で遊び始め、素人の私が、収録中に当然止めに入ることなど出来ずに、三浦春馬さんのジャケットを気にしつつ、結局お二人が楽しくアンティーク雑貨で楽しんでいるのを見届けるだけでした。
収録後、三浦春馬さんが「記念写真を撮りましょう」と言ってくださり、私が端に立つと「今日はケントさんが主役ですから」と言って私をセンターに誘導して、最高の笑顔で記念の思い出写真を一緒に撮ってくださいました。
最後の最後まで気遣いの方で器の大きい優しいジェントルマンでした。番組放送後の反響
番組がオンエアされた後、沢山の方から反響をいただきました。ご来店いただいたり、メールやSNS、電話などでメッセージをいただいたりしました。
地方から東京へ遊びに来たついでに弊店へご来店くださるのではなく、弊店へのご来店を目的に東京や静岡のケントアンティークストア本店にわざわざいらしていただき本当にありがたかったです。
同業の方からは「新たなアンティーク家具の切り口を作ってくれた。」と感謝されたり、
「今まで古いものは無意識に新しいものに買い替えていたのを、見直すきっかけになった。」
「SDGsの具体的な意味がわかった。」
「NHKの番組に出るような会社と取引できていて幸せです。」
こんな嬉しい言葉、出来事がたくさんありました。
本当にこの番組に出演させていただいて良かったと実感できる反響でした。
「世界はほしいモノにあふている」ケントストア登場
2019年11月21日NHK総合「世界はほしいモノにあふれている~暮らしを豊かにするアンティークイギリス」に、ケントストアが登場しました。
こちらの放送内容については、こちらをご覧ください。↓静岡本店 TEL : 054-204-7003 ⬅ スマートフォンの方はこちらをクリック
東京目黒店 TEL : 03-6420-0548 ⬅スマートフォンの方はこちらをクリック