【徹底解説】ヴィクトリアン様式 家具の特徴
ジョージ4世の統治下において流行した『リージェンシー様式(摂政様式)』。ジョージ4世の跡を継いだのは、ジョージ4世の弟である”ウィリアム4世”でした。ウィリアム・・・
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ジョージ4世の統治下において流行した『リージェンシー様式(摂政様式)』。
ジョージ4世の跡を継いだのは、ジョージ4世の弟である”ウィリアム4世”でした。
ウィリアム4世は、その時すでに御年65歳。1830年に即位し、在位はわずか7年でした。
次に王位を継承したのはウイリアム4世の姪である”ヴィクトリア”でした。1837年、ヴィクトリアが18歳にしてハノーヴァー朝第6代女王に即位します。
その後63年間にもわたり、大英帝国の女王として、イギリスを世界の強国に成長させました。ヴィクトリア女王の統治下(1837年~1901年)の建築物と家具のデザインを『ヴィクトリア(ヴィクトリアン)様式』といいます。
ここでは、『ヴィクトリア様式』の家具のデザインについてご紹介します。
ヴィクトリア女王とは
ヴィクトリア女王は、厳しい母のもとに育ったため、堅物で、時には感情的な部分はあったけれど、自分の意見をしっかりと述べる女性でした。
イギリス国民にとって、これは新鮮なことで、新しい時代にふさわしい女性でした。
ヴィクトリア女王は、私生活では、いとこの”アルバート公”と結婚し、9人の子供を授かります。
ヴィクトリア女王は、その子供たちをヨーロッパ各国の元首と結婚させるなど、血縁政策も進めました。63年間にわたり、女王として君臨したヴィクトリア女王ですが、その間、イギリスは植民地化、半植民地化を進め、陸地面積や人口が世界の4分の1を占める巨大国家へと成長していくのです。
ヴィクトリア女王の治世下は、イギリスが最も繁栄した時代といえます。ヴィクトリア様式 家具の特徴
ヴィクトリア様式は、まさに折衷様式(エクレクティック:Eclectic)の時代です。
当時の家具デザイナーは、それまでの様式、スタイルを復古させていきました。
ジャコビアンリバイバル、ルネサンスリバイバル、ゴシックリバイバル、ロココリバイバル、クイーンアンリバイバル・・・
そして、いろいろな時代の様式を1つの家具の表面に取り付けたフリールネッサンス・・・などなど。
まさにスタイルが混乱した時代です。その背景には、18世紀に始まった産業革命が関係します。
産業革命により、イギリスは『世界の工場』と呼ばれるほど、世界最大の先進工業国となっていきました。
家具彫刻は、木彫機械が開発され蒸気を動力とする機械彫刻が可能になったことで、デザインの多様化が進みました。そして、人々の暮らしも急激なスピードで豊かになりました。
それまで農業に携わっていた地方の人々は、ロンドンやバーミンガム、マンチェスターといった工業都市へと移り住みました。
それにより都市部の人口が爆発的に増え、住宅需要もそれに伴い急上昇したのです。供給量の増大とともに、デザインも更に多様化します。
生活が豊かになると”好み”も多様化します。結果、必然的に、過去の良いとされるもの、優れた家具、デザインを模索するようになり、リバイバルブームが到来したのです。
一方で、機械生産による量産の粗悪品も生産されるようになっていきました。
これが後のウィリアムモリスを中心とした『アーツ・アンド・クラフツ運動』へとつながります。ヴィクトリア様式 絶頂のロンドン万国博覧会
1851年、世界で最初の国際博覧会である『ロンドン万国博覧会』が開催されました。
ロンドン万国博覧会は、ヴィクトリア女王の夫であるアルバート公が自ら融資し、指揮をとりました。
ロンドン万博の目玉であった総ガラス張りの「クリスタルパレス(水晶宮)」は、イギリスの技術力・工業力を世界に示しました。ロンドン万国博覧会の成功は、家具の世界にも及び、上流階級による注文生産から、市民が家具販売店で購入することを可能にしました。
また、家具の情報や傾向などが記された定期刊行物も発刊されるようになり、市民が家具に対する興味を持つきっかけとなりました。ヴィクトリア様式 新しいデザインの家具
折衷様式といえるヴィクトリア様式ですが、新しく誕生したデザインの家具もあります。
↑上の画像の椅子は、1851年にイギリスの家具デザイナーである ヘンリー・エイルズ(Henry Eyles:1854-1908)がデザインした椅子です。
背面にはヴィクトリア女王と夫であるアルバート公の陶板がはめ込まれています。
女王の椅子に肘がないのは、当時の貴婦人は幅の広いスカートを着用したためです。では、ヴィクトリアン時代にどんな家具が誕生したか見てみましょう!
会話椅子(コートシップチェア)
ヴィクトリア様式では、2人または3人が会話に便利なようにデザインされた椅子「会話椅子」も生まれました。
会話椅子は、別名『コートシップチェア”courtship chair”』または『テテアテテチェア”Tete a Tete Chair”』と呼ばれます。
コートシップとは求愛、テテアテテとは内緒話を意味します。ダベンポートデスク
ダベンポートデスクは傾斜したデスクトップと小ぶりなサイズが特徴的で、多数の収納スペースを持っています。
コンパクトで便利な書斎用のデスクとして、ヴィクトリア時代は貴婦人たちの間で人気を博しました。
デスクトップの上の方には、レターセットや万年筆、インクボトルをしまう細長の小さな収納スペースがあります。
また、天板を開くと、書類や筆記用具をしまう収納スペースと小さな引出しがあります。
デスクの側面左右に引き出しがついていますが、片側はフェイクの引き出しになっているものが多くあります。シフォニア
シフォニアとはヴィクトリアン時代に上流階級の間で流行した、フランス風サイドボードです。
天板には大理石、背面や収納部の扉には鏡が嵌めこまれていることが多く、ウォッシュスタンドのような使い方もできます。
こちらは上流階級向けの家具ということで天板のマホガニー材は勿論無垢材を使用しています。
バックボードには、トップに施されたアカンサスの花のハイレリーフからサイドまでアカンサスリーフが繋がった形で装飾されています。
長い歳月を経た材が放つ独特の飴色もまた魅力の一つです。チェスターフィールド
チェスターフィールドソファは英国の伝統的な革製家具です。
1830年代 、布張りでボタン留めされたソファが流行し、レザー生地で ボタン留め、キャスター付きのソファが誕生しました。
チェスターフィールド伯爵が”デザインした”という説と”愛用していた”という説がありそのあたりははっきりしませんが、名前の由来は当時ダンディズムの象徴であったまさしくチェスターフィールド伯爵からです。
一般的に”チェスターフィールド ソファ”とは3人がけ のレザーソファを指し、英国では、ソファではなく「セティ(長椅子)」と呼びます。
部屋の中での存在感おけるインパクトはもちろん、使えば使うだけ体になじみ、年月を経るごとに深みを増し愛着が湧いてゆくレザーソファはアンティークソファの中でも長年に渡り人気のあるアイテムです。ホールスタンド
ホールスタンドはリージェンシー時代から壁に立てかけるようなスタイルになり、サイズも大型になっていきました。
鏡や引き出しが取り付けられ、杖や傘を収納するために、仕切りと受け皿が製作されました。
特にさまざまなスタイルが調和したヴィクトリア時代では、バリエーション豊かなデザインが登場し、人々を魅了しました。バルーンバックチェア
バルーンバックチェアはヴィクトリア女王の治世の初期から一世代以上にわたって流行した、ヴィクトリア様式の中でも人気の高いデザインです。
これまでのダイニングチェアは、背もたれから耳のように伸びた幅広のショルダーボードで作られることが多かったのですが、背もたれの両端が丸みを帯びた風船のような形状が開発されました。
特に、カブリオールレッグのバルーンバックが最も人気を博し、1850年代以降に流行しました。パピエ・マーシェの椅子
ヴィクトリア時代には椅子やテーブルに、パピエ・マーシェとよばれる新しい家具材料が使われるようになりました。
パピエ・マーシェとは、紙に接着材、糊、砂などを混合したもので、これを椅子などの鋳型に流し込み、圧縮成形して作ります。
木材ではできない複雑な形を作り出すことができるとして、人気を博しました。トーネットによるベントウッドチェアの誕生
動力機械の発明が生産技術に画期的な飛躍をもたらした産業革命。
上級階級のための家具だけでなく、一般市民をターゲットにした家具も誕生しました。ミヒャエル・トーネットは、1830年代に蒸気によって木を曲げるという画期的な技術を家具生産業に取り入れ効果的な生産方法を確立しました。
ベントウッドチェアの誕生です。
ベントウッドとは「曲木」を意味します。
1852年に特許を取得、1859年に完成した「No.14」は、フォルムのシンプルさと生産性の良さ、そしてパーツを6つに分解できるノックダウン方式を採用し、原材料の仕入れ、輸送、保管、生産、販売のあらゆる面で革命的なビジネスモデルを確立しました。
ノックダウン方式という画期的な方法で生産されたベントウッドチェアは、大量移送を可能にし、世界中に広まりました。
それは結果として、40年に渡り5000万脚を生産・販売し、100年以上経た今でも生産し続けるベストセラー商品となっています。ベントウッドチェアの特徴は、蒸気で柔らかくした木材を型枠に入れて成型して製作するところにあります。
豊富なデザインがあり、美しい木のラインを持つ、アンティークの王道です。
↑上の画像のベントウッドチェアは、最も定番なスタイル「ダブルループ」と呼ばれるベントウッドチェアです。
背もたれは湾曲した2つの木材で作られており、バルーンバックとも呼ばれています。
座面に施された花柄のエンボスが、シンプルなデザインにアクセントを与えてくれます。
女性が片手で持てるほど軽量な点も魅力の一つです。ケントストアが取り扱うヴィクトリアの英国アンティーク家具
ウォッシュスタンド
1890年代 ヴィクトリア時代に製造された英国アンティークのウォッシュスタンドです。
水道などなかった時代、洗面器などを置き顔や手を洗うために使用しました。
水はけがよく耐水性が強いため、天板に大理石を使用しています。
こちらは、世界三大銘木 マホガニーを使用した高級感漂うウォッシュスタンドで、脚のデザインがとても特徴的です。
年代からも、大変希少価値の高いウォッシュスタンドです。バルーンバックチェア
1880年代に製造された英国アンティークのバルーンバックチェアです。
ヴィクトリアン様式の彫刻が美しい逸品です。
落ち着いたオレンジ色の布地で張り替えています。ナーシングソファ
1890年代に製造された英国アンティーク ナーシングソファです。
ナーシングソファとは看護・保育用の椅子のことを指し、お年寄りが腰掛けたり、赤ちゃんの授乳時に使用するため、座面の高さが通常の椅子より低めになっておりゆったりとお座りいただけます。
ディテールにこだわりを感じられる逸品です!【徹底解説】リージェンシー様式 家具の特徴
ジョージ4世による摂政の時代(1811年~1830年)。
短い期間にもかかわらず、家具デザイナーを多く輩出し、活況を呈しました。
この時代の建築、家具のデザイン様式を『リージェンシー(摂政)様式』といいます。
『リージェンシー様式』は、先のミッドジョージアン様式でみられた新古典主義(ネオクラシシズム)のデザインに、さらに優雅さと軽やかさが加わり、気品あふれるものでした。『リージェンシー様式 』の家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。
【徹底解説】ジョージアン様式 家具の特徴
ジョージアン様式 家具の特徴
photo by: kentstoreジョージ1世、ジョージ2世、ジョージ3世による治世の時代(1714年から1820年)。
この時代における建築やデザインの様式を『ジョージアン様式』といいます。
ヨーロッパの列強国の中で、芸術面・文化面で遅れをとっていたイギリスですが、ここにきて、家具生産の黄金期を迎えます。家具生産の栄華を極めた『ジャコビアン様式』の建築物と家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。
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