【徹底解説】ジョージアン様式 家具の特徴
1714年。ステュアート朝の最後の女王”アン女王”の崩御後、ドイツから迎えられた”ジョージ1世”が王位を継承し、グレートブリテン王国の国王として即位しました。こ・・・
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1714年。ステュアート朝の最後の女王”アン女王”の崩御後、ドイツから迎えられた”ジョージ1世”が王位を継承し、グレートブリテン王国の国王として即位しました。
これが1901年まで続く”ハノーヴァー朝”の始まりです。ジョージ1世の即位後、それまで絶対的な権力を持っていた王室から、徐々に、権力は議会へと移っていきます。
それにより、議会政治にかかわる階層や職業に就く人が、富を獲得するようになりました。
さらに、植民地の広大、人口の増加、産業革命と、国が力をつけていくと同時に、家具やインテリアの分野においても活気がでてきました。
ヨーロッパの列強国の中で、芸術面・文化面で遅れをとっていたイギリスですが、ここにきて、家具生産の黄金期を迎えます。ジョージ1世、ジョージ2世、ジョージ3世による治世の時代(1714年から1820年)における建築やデザインの様式を『ジョージアン様式』といいます。
ジョージアン様式は、期間も100年以上と長く、その間に様式も変化していることから、大きく2つに分けられます。
ジョージ1世、ジョージ2世を『アーリー・ジョージアン様式』といい、ジョージ3世の時代を『ミッド・ジョージアン様式』といいます。ここでは、家具生産の栄華を極めた『ジョージアン様式』の家具のデザインについてご紹介します。
アーリージョージアン様式 ~ ウィリアム・ケントの登場
1719年、後にイギリスを代表する建築家・造園家となる、ウィリアム・ケント(William Kent:1685年-1748年)が、イタリアでの修行を終え、イギリスに帰ってきます。
ウィリアム・ケントは、第3代バーリントン伯爵の庇護のもと、建物や庭園、そして家具など、あらゆる方面に”パラディアン様式”を用いました。
パラディアン様式とは、ベネチアの建築家アンドレア・パラディオ(Andrea Palladio:1508年-1580年)のデザインした古代ローマ様式を取り入れたものです。
ウィリアム・ケントは、建造物、室内装飾、家具、庭園のすべてを一体の統一感でまとめました。ウィリアム・ケントが、ノーフォーク州にあるホートン・ホール(Houghton Hall)に置くためにデザインした重厚で豪華なコンソールテーブルは、特に人気を博しました。
ウィリアム・ケントのデザインに触発され、当時、英国で主流であった”バロック様式”は、”ロココ様式”へと移っていきました。
※ロココ様式とは、18世紀フランスを中心に流行したデザイン様式のこと。それまでのバロック様式から発展したもので、ルイ15世の時代に該当するため「ルイ15世様式」とも呼ばれています。
アーリージョージアン様式 ~ マホガニー材の登場
1720年、ウォールナットの有力な供給元であったフランスが、ウォールナットの輸出を禁止します。
一方、イギリスは、植民地であった北米やインド諸島からの木材に輸入税を課していましたが、1721年に輸入税を廃止します。
それにより、ウォールナットからマホガニーへと切り替えが始まったのです。マホガニーは、ジャマイカ産をはじめプエルトリコ、キューバなどで、それぞれの特徴をもったマホガニーがイギリスに輸入されることになりました。
1700年代後半には、ホンジュラスから大量のマホガニーが輸入されます。
ホンジュラス産のマホガニーはジャマイカ産のマホガニーに比べて、木目の細かさなど劣る部分もあり高級家具には不向きでしたが、中流家具や象嵌や寄木材の部材として使用されました。アーリージョージアン様式 ~ チッペンデールの登場
この時期は、イギリスでも最も著名な家具デザイナーであるトーマス・チッペンデール(Thomas Chippendale:1718年–1779年)が活躍します。
トーマス・チッペンデールは、自身で工房を持ち、完成した家具の販売店や家具用の材木店も持っていました。
1754年、トーマス・チッペンデールは、家具の専門書として『The Gentlemen and Cabinet-maker’s Director(紳士と家具師のための指針)』を発刊します。
この本には、チッペンデールがデザインしたロココ様式、ゴシック様式、シノワズリなど多種多様な作品が掲載されています。
トーマス・チッペンデールのデザインした作品は、イギリスの家具職人、工房などに多大な影響を与えました。アーリージョージアン様式 ~ チッペンデール様式
トーマスチッペンデールが創案した家具様式を『チッペンデール様式』といいます。
多くの傑作を残したチッペンデールの椅子のデザインは、次の4つに分けられます。
①クイーンアン風
チッペンデール様式のクイーンアン風は、椅子の脚部のデザインが、カブリオール(猫脚)とボールクロウであるのが特徴です。
背面には縦型の中央板(スプラット)があります。
“ボール&クロウ”とは”知恵”や”財産”の意味を持つ「玉」を、縁起の良い「龍」がしっかりと掴んでいる様子を表現しているデザインです。②ゴシック風
チッペンデール様式のゴシック風とは、垂直の脚と背にゴシックアーチが付いている様式をいいます。
③ロココ風
チッペンデール様式のロココ風とは、背面にロココ風のリボンがついているのが特徴です。
④中国風
チッペンデール様式の中国風とは、中国風の彫刻や中国の文字を表現しているデザインです。
ティルトップテーブル(サパーテーブル)
椅子以外のチッペンデールのデザインには、ティルトップテーブル(サパーテーブル)があります。
ティルトップテーブル(サパーテーブル)とは、使わない時は天板をたてて壁際に置けるテーブルのことです。アーリージョージアン様式 ~ その他の家具
ドロップリーフテーブル
アーリージョージアン様式には、チッペンデール様式の他にもさまざまな家具が流行しました。
まずは、ドロップリーフテーブルです。今ではバタフライテーブルとも言われます。
天板が垂れ板の構造になっており、引き出しがついたものが、予備的テーブルとして使用されました。ミッド・ジョージアン様式 ~ ロバート・アダムの登場
18世紀後半になると、4人のアダム兄弟が建築家として室内家具設計を手掛けていきます。
4人の中でも2番目のロバート・アダム(Robert Adam:1728年-1792年)は有名です。当時、イタリアのポンペイの遺跡が発掘され、古代ギリシアやローマの古典が紹介されたことで、 ギリシャやローマの古典芸術の復興ともいえる『ネオクラシシズム:新古典主義』が、ローマを中心にヨーロッパ全土で興りました。
アダム兄弟もこの影響を受け、インテリアや家具に古典を取り入れた独特のスタイルを作り出しました。↑上の画像は、ロバートアダムが内装を手掛けたロンドンにあるケンウッド・ハウス(Kenwood House)です。
天井の雰囲気、どこかで見たことがあるようなデザイン・・そう!ウェッジウッドに似ていますね♡
ロバートアダムのデザインは、陶磁器メーカー “ウェッジウッド”に多大なる影響を与えたことでも知られています。ロバート・アダムのデザインは、あくまで古典を基準とした上品な作風です。
家具の形は全体に細身で実用性より装飾性に重点を置いています。
背面には卵型のメダリオンや、竪琴(たてごと)のデザイン、脚には縦に並べて彫りつけた溝(胡麻柄じゃくり:フルーティング)が施されていることが特徴です。
この時期には、猫脚やカブリオールレッグのデザインは、すっかり見られなくなりました。ミッド・ジョージアン様式 ~ ヘップルホワイトの登場
ジョージ・ヘップルホワイト(George Hepplewhite:?–1786)は、ロバート・アダムと当時期に活躍した家具デザイナーです。
ヘップルホワイトもアダムと同様、新古典主義の影響を受けながら、独自のデザインを生み出しました。ヘップルホワイトのデザインは、盾形、ハート形の背面、脚は下にいくほど細くなり、床に接する部分はスペード形になっているデザインが多くあります。
また、麦の穂、シダの葉、花飾りなどの彫刻や象嵌を多用しているのが特徴です。ミッド・ジョージアン様式 ~ トーマスシェラトンの登場
トーマスシェラトン(Thomas Sheraton:1751–1806)も、このミッド・ジョージアン時代に活躍した家具デザイナーです。
トーマスシェラトンは、家具に幾何学の原理を示し、それを基礎としてデザインを考えた作品をつくりました。
トーマスシェラトンはの家具は、機能的にすぐれたものが多く、本棚とデスクを兼ねたラインティンビューロー、二重寝台であるツインベッド、ゲームテーブルなどがあります。トーマスシェラトンは、椅子のデザインも多くの傑作を残しています。
背面は構造的にデザインされ、横木と縦木のバランスがよく、四角張った形が特徴です。
脚は縦に並べて彫りつけた溝(胡麻柄じゃくり:フルーティング)を施されてたものが多くあります。
彫刻は使わずに、寄木象嵌が多く使われており、特に線象嵌にすぐれています。ミッド・ジョージアン様式 ~ サテンウッドとローズウッドの登場
1770年代になると、家具材としてマホガニーに加えて、サテンウッドとローズウッドが登場します。
サテンウッドは、セイロン島やインド諸島が原産地です。
サテンウッドの特徴は、木目が細かく、堅牢で耐久性があります。
色調は、淡黄色や金褐色のものがあり、光沢がある木材です。ローズウッドは、立木を伐採したときに、薔薇の香りがすることから、ローズウッドと名付けられた木材です。
ローズウッドの産地は、ブラジルとホンジュラスです。
材質は、硬く重く、色調は紫褐色で黒色に近い筋が通っています。
ホンジュラス産のローズウッドは、ブラジル産のローズウッドより色調が淡く、均一な木目を持っています。サテンウッドとローズウッドの登場により、象嵌(インレイ)などの細工の技術が格段に進歩しました。
ケントストアが取り扱うジョージアン様式の英国アンティーク家具
ティルトップテーブル(サパーテーブル)
1930年代に製造された英国アンティークのティルトップテーブルです。
天板を垂直にティル(Tilt)…傾けて使うことからティルトップテーブルと名付けられ、アフタヌーンティーやサパータイムに活躍したと考えられます。
一人暮らしのお部屋で使用するテーブルやちょっとしたお茶休憩時に使用するテーブルなど様々な使用方法があります。
使用しない時は、天板を縦にして収納しておくことができる便利なアイテムです。チェア4脚セット
1930年代に製造された英国アンティークのチェア4脚セットです。
チッペンデール様式のクイーンアンスタイルです。
ボールクロウであるのが特徴です。ドロップリーフ(バタフライテーブル)
1930年代に製造された英国アンティークのドロップリーフ(バタフライテーブル)です。
脚部のボールクロウのデザインがとても印象的です。
天板の両脇が収納でき、蝶の羽のように広げて使用することができます。
片側の天板を閉じ壁につけてデスクとして使用するなど、さまざな使い方を楽しむことができます。【徹底解説】クイーンアン様式 建築物と家具の特徴
イギリス王室の歴史の中でも、最初で最後といわれている夫婦での共同統治を行った、”ウィリアム3世”と妻の”メアリー2世”。
ウィリアム3世とメアリー2世の間には子がいなかっため、メアリー2世の妹”アン”が多い王位を継ぎました。
アン女王の統治下におかれた時代の建築物と家具のデザインを『クイーンアン様式』といいます。
『クイーンアン様式』の建築物と家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。【徹底解説】ウィリアム&メアリー様式 建築物と家具の特徴
1688年の名誉革命により、王として迎えられたオランダ総督のウィリアム3世と妻のメアリー2世。
イギリス王室の歴史の中でも、最初で最後といわれている夫婦での共同統治を行いました。
ウィリアム3世とメアリー2世の統治下におけるデザイン様式を『ウィリアム・アンド・メアリー様式』といいます。 『ウィリアム・アンド・メアリー様式』の建築物と家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。商品に関すること等、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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