【徹底解説】ウィリアム&メアリー様式 建築物と家具の特徴
スチュアート朝を開いたジェームズ1世からチャールズ2世の時代に発展した建築や家具のスタイルである『ジャコビアン様式』。チャールズ2世の次に王位を継いだチャールズ・・・
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スチュアート朝を開いたジェームズ1世からチャールズ2世の時代に発展した建築や家具のスタイルである『ジャコビアン様式』。
チャールズ2世の次に王位を継いだチャールズ2世の弟”ジェームズ2世”は、建築や家具のデザインに対して、影響を与えることはありませんでした。『ジャコビアン様式』に続いて、デザインに大きな発展が見られたのは、ジェームズ2世の娘、”メアリー2世”とその夫”ウィリアム3世”による共同統治の時代です。
ウィリアム3世とメアリー2世の統治下におけるデザイン様式を『ウィリアム・アンド・メアリー様式』といいます。ここでは、『ウィリアム・アンド・メアリー様式』の建築物と家具のデザインについてご紹介します。
ウィリアム3世&メアリー2世とは
1688年の名誉革命により、王として迎えられたオランダ総督のウィリアム3世と妻のメアリー2世。
イギリス王室の歴史の中でも、最初で最後といわれている夫婦での共同統治を行いました。ウィリアム3世は、イングランド銀行を設立し国債を発行することで戦費をまかなうなどの政治的資質、また戦場においても優れた指揮官としての資質を持っていたと言われています。
メアリー2世は名誉革命で追放された先の国王ジェームス2世の娘です。
メアリー2世は即位後わずか5年。
天然痘のため33歳で亡くなってしまいます。
メアリー2世は、国民からの人気も高く、英国の偉大な作曲家ヘンリー・パーセル(Henry Purcell 1659年-1695年)は、メアリー2世の葬儀のために「メアリー女王の葬送の音楽」という曲を残しています。
メアリー2世の死去後は、ウィリアム3世が単独で統治を行いました。ウィリアム・アンド・メアリー様式 建築物の特徴
スライド式の窓
ウィリアム・アンド・メアリー時代の建築物は、オランダ・バロックの影響を強く受けています。
スライド式の上げ下げ式窓が使えるようになり、縦長の窓を規則正しい大きさと間隔で並べることで、部屋の中により多くの明かりを取り込むことができるようになりました。天井
天井は、漆喰(しっくい:プラスター)で加工されたデザインが上流階級の家に普及していました。
平らな板状の部分に、漆喰細工の分厚い楕円をつけたり、絵画を描いたり、バロック様式の特徴になっています。
しかし、天井の高さはまだそれほど高くなく、グレートホールを除けば、やや低い構造でした。ウィリアム&メアリー様式 家具の特徴
『ウィリアム・アンド・メアリー様式』は建築と同様に家具でも、ウィリアム3世の祖国であるオランダの影響を非常に受けています。
それは、名誉革命後に王として迎えられた時、ウィリアム3世はオランダから家具工作製作のすぐれた職人を多く同行させたからです。また、1666年にロンドンで起こった火事「ロンドン大火」により、結果として、家具の需要が増え、家具の大量の生産とともに、多様化された時期でもあります。
ウォールナット
16世紀、17世紀を通して、オランダ、イタリア、フランス、スペインなどでは、ウォールナット材は加工の利便性や優れた装飾性のため、家具に多く用いられていました。
イギリスでは、ウィリアム・アンド・メアリーの統治の頃からウォールナット材を使用した家具が作られるようになりました。寄木細工の隆盛
オランダからの影響を最も受けたものの一つに、寄木細工、象嵌(インレイ)などの装飾デザインがあります。
ジャコビアン様式にも、初歩的な象嵌が施された家具が作られましたが、ウィリアム&メアリー時代のこの時期の寄木細工や象嵌は、技術的にも洗練されたものになっています。
寄木細工には、黒檀、かえで、ひいらぎ、象牙、青貝などが用いられました。
また、中国風や日本式の蒔絵を模して表面装飾仕上げとすることもありました。
そうした寄木細工の隆盛とともに、細工が高度化するにつれて、部材同士の精密な接合や、合わせの精確さが必要になったため、金属ネジも使われるようになりました。透かし細工
ウォールナット材は加工しやすい木材でもあります。
ウォールナット材の普及に伴い、透かし彫り細工の技術が発展しました。インバーテッドカップ・バラスター
ウィリアム&メアリー様式では、テーブルやキャビネットの脚に、インバーテッドカップ・バラスター(Inverted cup balaster)と呼ばれる挽物がデザインされるようになりました。
インバーテッドカップ・バラスターとは、カップを逆さにしたデザイン装飾のことをいいます。アプフォレスタリー・チェア
オランダの織物技術もウィリアム&メアリーの時代に、イギリスへと伝わりました。
それにより、椅子などに布地を本格的に用いるようになりました。
布張りの椅子は、ウィリアム&メアリー様式の以前にもスツールや長椅子などで用いられていましたが、この時期になり、本格的に詰め物をした布地張りの「アプフォレスタリー・チェア」が普及しました。ケントストアが取り扱うウィリアム&メアリー様式の英国アンティーク家具
透かし彫りデザインのチェア
1930年代 英国アンティークのオークチェアです。 背面、座面にはサスティナブルな淡いレッドのフェイクレザーで張替えをしております。 ねじったデザインであるツイストと透かし彫りがとても印象的です。 存在感をひときわ放つチェアです。
インバーテッドカップ・バラスターのコンソール
1930年代に製造された英国アンティークのコンソールテーブルです。
日本最大級の在庫量を誇るケントストアでも、このインバーテッドカップ・バラスターのデザインのアイテムは非常に希少なものになっています。
コンソールテーブルは、玄関やリビングに壁付けしたり、ソファの横に置きサイドテーブルとして使用したり、 いろんな用途でご利用いただけるアイテムです。ウォールナット材のキャビネット
イギリスアンティークのキャビネットです。
ウォールナットの木目がとても美しいキャビネットです。
ウィリアム・アンド・メアリー様式では、強度を増すためにストレッチャーがH形に加えてX型も加わるようになりました。【徹底解説】ジャコビアン様式 建築物と家具の特徴
1603年、イギリスでは、チューダー朝の最後の女王である”エリザベス1世”の死後、傍系のスコットランド王ジェームズ6世が”ジェームズ1世”として即位しました。
イングランドにおけるステュアート朝の始まりです。
ジェームズ1世が即位した1603年から、ピューリタン革命(清教徒革命)で権力を握ったクロムウェルの時代(1658年)までを『前期ジャコビアン様式』、チャールズ2世の統治下におかれた時代(1660年-1685年)の様式を『後期ジャコビアン様式』といいます。
『ジャコビアン様式』の建築物と家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。【徹底解説】エリザベス様式 建築物と家具の特徴
チューダー朝の最後の女王である”エリザベス1世”の統治下にあった1558年から1603年。
エリザベス朝の建築物と家具のデザインは、それまでの『チューダー様式』のデザインを受け継ぎながらも、イタリア・ルネサンスの影響を受け、特に室内工芸の分野で大きな進歩・発展がみられました。
この時代の建築やデザインの様式を『エリザベス様式』といいます。
『エリザベス様式』の建築物と家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。商品に関すること等、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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