【徹底解説】ジャコビアン様式 建築物と家具の特徴
1603年。日本では、徳川家康が征夷大将軍に任命され、江戸に幕府を開いた年。イギリスでは、チューダー朝の最後の女王である”エリザベス1世”の死後、傍系のスコット・・・
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1603年。日本では、徳川家康が征夷大将軍に任命され、江戸に幕府を開いた年。
イギリスでは、チューダー朝の最後の女王である”エリザベス1世”の死後、傍系のスコットランド王ジェームズ6世が”ジェームズ1世”として即位しました。
ここからイングランドにおけるステュアート朝の始まりです。
エリザベス1世には子供がいなかったので、チューダー家と血縁関係のあるステュアート家が招かれたのです。ジェームズ1世(在位1603年-1625年)の統治下におかれた時代の建築物と家具のデザインを『ジャコビアン様式』といいますが、 広義では、ジェームズ1世が即位した1603年から、ピューリタン革命(清教徒革命)で権力を握ったクロムウェルの時代(1658年)までを『前期ジャコビアン様式』、チャールズ2世の統治下におかれた時代(1660年-1685年)の様式を『後期ジャコビアン様式』といいます。
ちなみに、ジャコビアンとは、ジェームズ1世の”JAMES”がヘブライ語のヤコブ “Jacob”に由来することから、”ジャコビアン”といわれます。
ここでは、『ジャコビアン様式』の建築物と家具のデザインについてご紹介します。
ジャコビアン様式 建築物の特徴
ジャコビアン朝の建築物は、先のエリザベス様式を引き継ぎなから、イタリア、フランス、オランダなど大陸からの影響も大きく受けています。
シンメトリー
↑こちらは、イギリス東部ノーフォークにあるブリッキングホールです。
1616年に、政治家であったヘンリー・ホバート卿(Sir Henry Hobart:1560-1625)が建てた邸宅です。
現在は、英国の慈善団体ナショナルトラスト(National Trust) が所有しています。ブリッキングホールの最大の特徴は、完璧なほどに左右対称であること。
これは、ルネサンスの影響を大きく受けたエリザベス様式の名残でもあります。
シンメトリーとバランスが重視された、ジャコビアン様式を代表する建造物です。造形された妻壁
ジャコビアン様式では、曲線を描いた妻壁など造形された妻壁(つまかべ)が用いられることが多くありました。
このデザインはオランダから、はいってきたものです。透かし彫りのパラペット
パラペットとは、屋上やバルコニー等の外周部に設置された低い壁(手すり壁)のことをいいます。
そのパラペットに透かし彫り細工が施されているのが、ジャコビアン様式の特徴です。手摺子と装飾された支柱
↑こちらは、東京都台東区にある旧岩崎邸です。
1896年に、三菱財閥 岩崎家の本邸として建てられました。
鹿鳴館、有栖川宮邸など明治期時代の洋館の建築家として活躍した英国の建築家ジョサイア・コンドル(Josiah Conder:1852年-1920年)が設計した邸宅です。
旧岩崎邸の内装は、ジャコビアン様式の装飾が見事に施された木造建築です。
国の重要文化財にも指定されています。まずは手摺子(てすりこ)。
手摺子とは、側壁がない部分で手すりを支えるために段板に立てられる棒のことをいいます。
17世紀初頭になって木彫細工の手摺子が普及しました。
挽物の手摺子は、後期ジャコビアン様式になって用いられるようになりました。
特に旧岩崎邸でも使用されている壺型の手摺子は、後期ジャコビアン様式で大流行したデザインです。次に支柱をみてみましょう。
2本の支柱に施された彫刻は、ストラップワークと呼ばれる装飾が施されています。
ストラップワークはオランダからはいってきたデザインで、平らな革紐のような線が帯状に描かれているのが特徴です。ロンドン大火による木造建築の禁止
チャールズ2世の統治下の時代。 1666年9月2日。
ロンドンのシティにある、パン屋のかまどから出火します。
乾燥した空気、強風の悪影響も重なり、火事による灼熱地獄は4日間にもわたりました。
ロンドン市内の家屋、セントポール大聖堂などロンドンの街の約85%を焼き尽くすほどの大火事でした。
『ロンドン大火 The Great Fire of London』です。
これによって中世都市ロンドンは焼失し、木造建築の禁止され、建物の外壁はレンガや石造りにすること、道幅を広くすることなどが盛り込まれた建築規制が行われました。
これにより、火災に強い街づくりを目指し、ロンドンの再建が行われるようになりました。前期 ジャコビアン様式 家具の特徴
ジェームズ1世は、その後に続く王と違って、趣味や流行に無関心であったため、ジェームズ1世が家具の様式やデザインに影響を与えることはありませんでした。
家具の発展に貢献したのは、大陸からの影響を受け新しいものを導入したり工夫したりした職人達であったと言われています。前期 ジャコビアン様式は、エリザベス様式の影響を受けつつも、装飾に自由さが表れ、それまでのコテコテのデザインから軽快なデザインになりました。
オーナメントも、写実的なものから唐草模様などが導入されるようになりました。ジェームス1世、その息子のチャールズ1世がピューリタン革命で処刑された後、クロムウェルが政治を行った時期。
クロムウェルは極端なピューリタンであったため、「家具に彫刻を施すことは神の意志に反する!」との考えから、一時期、彫刻がない家具が作られました。この前期ジャコビアン様式は、アメリカ開拓の清教徒とともに海を渡り、アーリーアメリカン様式の家具として受け継がれました。
ボビンレッグ
エリザベス様式で流行した『バルバスレッグ』ですが、ジャコビアン様式では、細長い花瓶型になったり、ボビン型の挽物など、新しいモチーフが流行しました。
ボビン型の挽物は、たくさんのボールをまっすぐ並べたような形です。
中には、ボール・ボール・リング・ボール・ボール・リング・・・
のように、リングを間に挟んだものもあります。ボビン型の挽物が使われるようになった当初、椅子の脚部だけ用いられていましたが、椅子のすべての構成部分に、ボビン型の挽物が使われるようにもなりました。
また、ボビン型の挽物を半分に切って、箱物家具の枠組み部分や引き出しの前面、戸棚の扉にも取り付けられたりしました。引き出しの発展によるチェストの普及
箱物家具にある”引き出し”。
ジャコビアン様式の前までは、ただ枠があり、そこから引き出しを出し入れしていましたが、ジャコビアン朝に入って、出し入れがスムーズになるよう、サイドランナー(脇すべり)が取り付けられるなど工夫され、より実用的な家具として生み出されました。
引き出しの発展とともに、戸棚と引き出しが合わさった”ラバチェスト(mule chest)”と呼ばれる家具が広く普及しました。象嵌(インレイ)装飾の誕生
ジャコビアン様式には、初歩的な象嵌(インレイ)が、家具に施されるようになりました。
象嵌のデザインは、唐草模様や市松模様が多く使用されました。
象嵌(インレイ)は、彫刻や挽物細工と一緒に用いられ、1620年代になると引き出しや扉、チェストなどの羽目板とともに使われるようになりました。後期 ジャコビアン様式(チャールズ2世様式) 家具の特徴
チャールズ2世(在位1660‐85)は、チャールズ1世の次男として誕生します。
長男は幼くして亡くなったため、チャールズ2世が実質的な嫡男でした。
ピューリタン革命により父チャールズ1世が処刑された後、チャールズ2世はフランスやオランダなど大陸各地に亡命します。
クロムウェル死後、1660年ロンドンに戻り『チャールズ2世』として即位し、スチュアート朝を再開させました。(王政復古)チャールズ2世は、芸術に対して、とても強い関心をもった人物でした。
そのため、チャールズ2世は、ルネサンスと亡命先であったフランスのバロック様式を導入し、両様式が混合した『後期 ジュコビアン様式』を作りだしました。ゲートレッグテーブル
チャールズ2世が王位に就くと、共和制時代に不安をもった貴族たちが、再び華美で陽気な生活にもどっていきました。
チャールズ2世の宮廷では娯楽として賭け事が流行しました。
そのためゲーム用のテーブルとして、甲板が3枚の板からなるゲートレッグテーブルが使用されるようになりました。
ゲームテーブルとして使用しないときは、天板をたたんで壁際に置き、臨時用のサイドテーブルとして使用されました。ツイストレッグ
チャールズ2世の王政復古のこの時期、貴族たちも”バロック様式”を好むようになります。
椅子の貫、脚、肘などには、『ねじり』挽物を使ったデザイン(ツイストレッグ)の椅子が作られました。
ツイストレッグが多く普及した背景には、挽物を製作するのに使われる”送り台”(スライディングレスト)が発達したことで、丸棒を螺旋状に挽けるようになりました。
刃の回転速度により、大きな螺旋、小さな螺旋と自由に作ることができるようになったのです。籐(ケイン)張りの家具
1660年代にはいると、東インド会社を通じて、東洋から籐(cane:ケイン)が輸入されます。
それにより座面や背もたれを籐張りにした椅子がつくられました。当時、東インド会社が輸入したアジアの商品は、大変もてはやされ、後に大ブームを巻き起こす『シノワズリ』がじわじわと普及しはじめた時期でもあります。
ケントストアが取り扱うジャコビアン様式の英国アンティーク家具
エントランステーブル
1880~1890年代に作られたジャコビアン時代のエントランステーブルです。
当時、大邸宅のレセプション用のセンターテーブルとして使用されていたものになります。
天板の幕板、脚に施された彫刻は、とても繊細で、時間をかけて製作されたことが分かります。
市場に出回ることも珍しい、大変貴重価値の高いテーブルです。ホールチェア
背面に双頭のグリフィン(グリフォン)が彫られているチェアです。
グリフィンは鷲の上半身に獅子の下半身を持つ伝説上の生き物です。
その猛々しい姿が繊細に彫られた背もたれと、太めのツイスト脚が存在感を放つ逸品となっています。サイドボード
イギリスアンティークのサイドボードです。
前期ジャコビアン様式のデザインになります。
エリザベス様式の名残を受けたバルバスレッグのコラム、H型のパネルを組みませた切嵌め式のデザインになっています。
さらにジャコビアン朝になり作られたボビンレッグを半分に切った挽物が装飾されています。ゲートレッグテーブル
天板を広げて、ダイニングテーブルやちょっとしたお茶時間としてのティーテーブルなど、大活躍してくれるゲートレッグテーブル。
片側の天板のみを広げて、壁につけることでデスクや収納・飾り台として使用できるのでとても便利です。
来客があった際には、両方の天板を広げて使用できるところが嬉しいポイントです!
使用しないときは、天板を折りたたんでコンパクトに収納もできます。
さまざまな使用方法があるので、一人暮らしの方からご家族暮らしの方まで使いやすく、利便性の高いゲートレッグテーブルです。【徹底解説】チューダー様式 建築物と家具の特徴
1455~1485年のイングランドの内乱「薔薇戦争」でリチャード3世を破って即位したヘンリー7世。
そのヘンリー7世にはじまり、エリザベス1世により幕を下ろした『チューダー朝時代(1485年~1603年)』
そのチューダー朝の時代に存在したデザインは、『チューダー様式』と呼ばれ、それまでのゴシック様式、イタリアのルネサンス様式の影響を受け、イギリス独自のスタイルで発展させていきました。
『チューダー様式』の建築物と家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。 分かりやすく簡潔にご紹介していますよ。【徹底解説】エリザベス様式 建築物と家具の特徴
チューダー朝の最後の女王である”エリザベス1世”の統治下にあった1558年から1603年。
エリザベス朝の建築物と家具のデザインは、それまでの『チューダー様式』のデザインを受け継ぎながらも、イタリア・ルネサンスの影響を受け、特に室内工芸の分野で大きな進歩・発展がみられました。
この時代の建築やデザインの様式を『エリザベス様式』といいます。
『エリザベス様式』の建築物と家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。商品に関すること等、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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