【徹底解説】エリザベス様式 建築物と家具の特徴
イギリス絶対王政の全盛期であり、小さな国からヨーロッパの大国へと成長した時代である『チューダー朝(1485年~1603年)』そのチューダー朝の最後の女王である”・・・
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イギリス絶対王政の全盛期であり、小さな国からヨーロッパの大国へと成長した時代である『チューダー朝(1485年~1603年)』
そのチューダー朝の最後の女王である”エリザベス1世”の統治下にあった1558年から1603年。エリザベス朝の建築物と家具のデザインは、それまでの『チューダー様式』のデザインを受け継ぎながらも、イタリア・ルネサンスの影響を受け、特に室内工芸の分野で大きな進歩・発展がみられました。
この時代の建築やデザインの様式を『エリザベス様式』といいます。ここでは、『エリザベス様式』の建築物と家具のデザインについてご紹介します。
エリザベス1世とは
チューダー朝 最後の女王である『エリザベス1世』
ヘンリー8世と2番目の王妃アン・ブーリンとの間に産まれたエリザベス1世は、25歳で女王に即位しました。
エリザベス1世は、幼少期から養育係や家庭教師により高度な教育を受けたこともあり、大変有能な人物でありました。エリザベス1世の最大の功績と言われる、1588年のスペインの無敵艦隊の打破(アマルダの海戦)。
アマルダの海戦の勝利は、英国史における最も偉大な勝利者として知られることになりました。また『東インド会社』設立の勅命を行うなど、経済面でもイギリスを発展させます。
エリザベス1世は「私はイングランド(英国)と結婚している」と、国のために生涯独身を貫き、政治、経済、芸術的な面でイギリスを発展させ、 イングランドの「黄金時代」を築き上げた人物です。
エリザベス様式 建築物の特徴
エリザベス様式は「チューダー様式」と「ジャコビアン様式」の過渡期にあたります。
エリザベス女王の統治下にあったこの時期は、イタリアで花開いたルネサンスが本格的にイギリスで展開された時期でもありました。
そのためエリザベス様式の建築物は、「チューダー様式」の流れを受けながら、それに加えルネサンス様式の影響を受けています。
また、エリザベス女王の趣味が大きく反映されているとも言われています。エリザベス様式 代表建築①ミドル・テンプル・ホール
ハンマービーム・ルーフ(Hammerbeam roof)
エリザベス様式の代表的な建築の1つに、ロンドン中心部シティのテンプル地区にある法曹院”ミドル・テンプル(Middle Temple )”の食堂である『ミドル・テンプル・ホール』があります。
1570年代初頭に完成し、ほとんどが当時のままの状態で残っています。その中でも、「ハンマービーム・ルーフ」と呼ばれる天井構造は、柱のない広い空間を作るために用いられた建築方法で、「イギリス中世の大工の最も壮大な努力」とも言われています。
※ハンマービーム・・・壁の上端から突き出した片持ち梁を利用し、その上に立つアーチ材で棟木や梁を支えるという小屋組み。
また、ミドル・テンプル・ホールには、エリザベス女王1世から下賜された、29フィート (約9メートル)のテーブルがあります。
そのテーブルは、ウィンザーの森から切り出された一本のオークの木から作られているそうです。
エリザベス1世は寵臣を連れ、ミドル・テンプル・ホールで度々食事をしたと伝えられています。エリザベス様式 代表建築②ハードウィック・ホール
エリザベス女王1世の安定した統治下のもと、王族や貴族は、インテリアは富の象徴として、住居に多くの財を投じるようになりました。
その中でもエリザベス様式の代表的の建築物として、イングランド中部ダービーシャー(Derbyshire)にある『ハードウィック・ホール(Hardwick Hall)』が挙げられます。ハードウィック・ホールは、4度にわたる功名な結婚を重ねることで、英国貴族の最高位まで上り詰め、エリザベス1世の次に莫大な富を築いた女性、通称「ハードウィックのベス(Bess of Hardwick)」と呼ばれているシュルーズベリー伯爵夫人が建てた邸宅です。
ガラスが贅沢だった当時、ハードウィック・ホールは窓が非常に大きく数も多かったため、「ハードウィック ホールは壁よりもガラスが多い建物」とも言われたほど。
ベスの富と権力を象徴する建物となっています。イギリスのルネッサンス様式の代表的建築家である、ロバート・スマイソン(Robert Smythson 1535–1614))により設計されました。
現在は、英国の慈善団体ナショナルトラスト(National Trust) が所有しています。
長い回廊
エリザベス様式では、長い回廊が普及したのも特徴です。
回廊は、主に散歩として使用されていたそうです。暖炉回りの装飾
暖炉回りの装飾が著しく装飾的になったのもエリザベス様式の特徴です。
グレートホール
ゲストをもてなすための部屋(グレートホール)もイタリア ルネサンスの影響を受けた内部装飾が見られるようになりました。
エリザベス様式 家具の特徴
ドローリーフテーブル(伸長式テーブル)
英国アンティークの代名詞でもある「ドローリーフテーブル」。
エリザベス朝 後期になって、ドローリーフテーブルは作られるようになりました。ドローリーフテーブルは、ドロワーリーフとも呼ばれますが、主天板の下に左右二枚の天板が収納されており、引き出すことにより天板のサイズが変わります。
このようにリーフを引く(ドロー)ことから、ドローリーフと呼ばれています。エリザベス様式、そして次に続くジャコビアン様式のドローリーフテーブルは、サイズが非常に大きく、リフェクトリーテーブル並みのものがほとんどで、 主にダイニングテーブルとして使用されていました。
また、天板を支える支柱は、ダブルカップ(コップを2つ向い合わせした形)、カップアンドカバー(蓋付きのコップ形)に挽いたものに彫刻を施しているデザインが特徴です。
バルバスレッグ
エリザベス朝時代の家具は、ルネサンスの影響で建造物の内装が非常に装飾的になっていったのと同時に、家具も豪華な彫刻の飾り柱などが用いられるようになり、重厚なスタイルになりました。
エリザベス様式の彫刻技術は、先のチューダー朝時代からさらに高まり、フランスに匹敵する技術力で、非常に精巧なものが作られています。
その中でも、バルバスレッグ(バルボスレッグ・メロンバルブなどとも言われている)のデザインが支柱に施されたデザインが多く見られます。
バルバスとは球根型を表し、膨らんだ球根の様なフォルムに草花や果物などが描かれています。
このバルバスレッグは、イギリス繁栄への願いを込めて作られたとされています。家具に使用する材料は、オーク材が多く使われました。
塗装は蝋や油で磨いたものが多くあります。天蓋ベッド
中世の王侯貴族やアッパークラスの邸宅では、独立した寝室がなく、寝る時は広間を使用していました。
そのため就寝時に、独自の空間を維持するため、天蓋付きのベッドが誕生したのです。エリザベス様式では、ヘッドボードとフレームに彫刻が施され、そして前方の2本の支柱にはバルバスの挽き物細工が施されているのが特徴です。
天蓋には、ドレープのある帳(とばり)やタペストリーのカーテンが使用されました。↑上の画像の天蓋ベッドは、シェイクスピアの妻であるアン・ハサウェイ(Anne Hathaway、1555年-1623年)の生家にあるベッドです。
英国産オーク材で造られ、バルバスレッグの支柱に華麗な彫刻が施されています。
ヘッドボードの彫刻は、古典的なギリシア・ローマ建築の特徴を基にしたパターンが施されています。ケントストアが取り扱うエリザベス様式の英国アンティーク家具
ドローリーフテーブル
1930年代の英国アンティークのドローリーフテーブルで、ダイニングテーブルの中でも最も人気の高いテーブルです。
ドローリーフテーブルは、伸張式天板が特徴的で、主天板を中心に左右の天板を伸ばすことができます。
天板は、片方の天板だけの伸張もできるため、3通りのサイズでご利用いただけます。
使用人数やお部屋のスタイル、用途に合わせて使用ご利用いただけるので、とても便利なドローリーフテーブルです。アームチェア
1930年代の英国アンティークのアームチェアです。
バルバスレッグのダイニングテーブルにあわせれば、よりエレガントでイギリスらしい雰囲気が出すことができますよ。ビューロー
1930年代 イギリスアンティークのビューローです。
ビューローとは、机と整理棚部分が合体した書机のことです。
蓋を開くと天板になり、机・デスクとして利用できます。サイドボード
1930年代 英国アンティーク家具のサイドボードです。
オークの特性を活かした重厚感溢れる家具です。
伝統的なバロックスタイルを踏襲したデザインとなっています。
脚部のバルバスにはアカンサスの葉が彫刻されており、抽斗にも同様の彫刻がされています。
フレームにも花びらをうろこ状に彫刻するなどマニュファクチュアのこだわりが見て取れます。【徹底解説】チューダー様式 建築物と家具の特徴
1455~1485年のイングランドの内乱「薔薇戦争」でリチャード3世を破って即位したヘンリー7世。
そのヘンリー7世にはじまり、エリザベス1世により幕を下ろした『チューダー朝時代(1485年~1603年)』
そのチューダー朝の時代に存在したデザインは、『チューダー様式』と呼ばれ、それまでのゴシック様式、イタリアのルネサンス様式の影響を受け、イギリス独自のスタイルで発展させていきました。
『チューダー様式』の建築物と家具のデザインについてのブログ記事はこちらをご覧ください。 分かりやすく簡潔にご紹介していますよ。【簡単解説】チューダー朝 歴代の王と女王の生涯
室町幕府の後継者争いに端を発した1467年の「応仁の乱」から、1603年に徳川家康が江戸幕府を開くまでの戦国時代。
同時期、イギリスでは、王位継承争いに勝利したチューダー家による『チューダー朝』(1485年~1603年)の時代を迎えていました。
『チューダー朝』は、イギリス絶対王政の全盛期であり、小さな国からヨーロッパの大国へと成長した時代でもありました。
チューダー朝の誕生から終焉まで、歴代の王と女王の生涯についてのブログ記事はこちらをご覧ください。 分かりやすく簡潔にご紹介していますよ。商品に関すること等、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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